命を救う “Say again.”
わかったフリは、空では禁物だ。
航空英語には時に「シンプルだが命を救うワード」がある。今回はそのワードである’Say again’について解説していく。つまらぬプライドを捨て、肩書きを捨て、素直になることで救える命があることを肝に銘じてほしい。
“Say again” は、最もシンプルで、最も強い確認表現
航空無線の世界で “Say again” は「もう一度言ってくれ」という意味の標準表現だ。
だが、たったこの一言が、管制の誤認・衝突・事故から命を守る、最後の防波堤になることがある。
聞き返すのが恥ずかしい? それは地上の感覚だ。
「え?今の聞き取れなかったけど……」
「まぁ、多分Runway 25って言ったよな……」
「今さら聞き返したら、恥ずかしい……」
——そんな“聞こえた気がした”が、最も危険である。
💥 “Say again” を言えずに起きたインシデント
ニューヨークJFK空港。
副操縦士が “Cleared for takeoff” と聞き違え、滑走路に進入しかけた。
だがキャプテンが違和感を覚え、“Say again?” と即座に聞き返したことで、誤認が判明。
結果、クロスランウェイに進入していた他機との重大インシデントを寸前で回避した。
“Say again” の一言が、空の秩序を守った。
詳しくは、NTSB公式報告書(Runway Incursion and Rejected Takeoff – AIR‑24‑01)をご確認ください。

遠慮はいらない。
✅ “Say again” の正しい使い方
- Say again, runway?(滑走路番号の確認)
- Say again, squawk?(スクォークコードの再確認)
- Say again, cleared for what?(何の許可か曖昧なとき)
プロフェッショナルは、聞き返す際も「何を」聞き返したいかを明確にする。
🛫 管制官ですら “Say again” を使う
実際のATCでも、こういうやりとりは頻繁に存在する:
“Say again, say the wind again.”
つまり “聞き返す=ミス”ではない。むしろ“聞き返せない=未熟” だ。
聞き返すことは、安全に対する責任と、プロ意識の表れである。
🧠 最後に一つだけ伝えたいことがある。
職場や学校で、上司や先輩、教師がこう言うことがある。
「大事なことだから二度は言わせるなよ。」
「二度は言わないからな。」
だが、それは空の倫理には反する。
正しくはこうだ。
「大事なことだから、何度でも言う。聞き逃したら、何度でも “Say again” と言ってくれ。」
空の上では、“確認こそが、誠意であり、勇気であり、安全の原点”である。
プライド、肩書き、スコア、上下関係では安全を達成することはできない。大事なのは双方が尊重し合い、心理的安全性が保たれた状態で飛行することだ。
詳しくは、米国国家運輸安全委員会(NTSB)による公式報告書もご参照ください。
📺 関連動画もまもなく公開予定。
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