「Cleared for takeoff」と「Line up and wait」の違い

「Cleared for takeoff」と「Line up and wait」の違い

いつの時代も少しのケアレスミスや認識の違いで大惨事や重大インシデントが起きている。いくら技術が発展し、システムが良くなっても最後は「人の目」「人の感覚」「人の直感」が必要になってくる。
今回はパイロット留学する人たちの間でも、たまに近藤してしまう「Cleared for takeoff」「Line up and wait」の違いについて解説をしていく。何度も言うようだが「航空英語」に曖昧は許されない。

Cleared for takeoff」と「Line up and wait」の違い、説明できるか?

「Cleared for takeoff」と「Line up and wait」の違い、説明できるか?

航空無線における最も基本的なフレーズのひとつが「Cleared for takeoff」であり、そして最も誤解されやすいのが「Line up and wait」である。
両者の違いを曖昧にしたまま操縦席に座れば、重大な滑走路侵入(Runway Incursion)を引き起こしかねない。
わからない時は滑走路に侵入するな。
これはすべての航空乗員に課された絶対的な原則である。


✅ Cleared for takeoff = 明確な離陸許可

「Cleared for takeoff」は、滑走路に進入し、かつ即座に離陸してよいという明確な許可を意味する。
この指示が出されるのは、前方の滑走路が完全に空いており、安全に離陸できる状態が整っている時に限られる。

やりとり例(架空コールサイン “C-123A”)

Tower: C-123A, cleared for takeoff runway 27.
C-123A: Cleared for takeoff runway 27, C-123A.

この瞬間から滑走路は「C-123A」に割り当てられ、他機の侵入は絶対にあってはならない。応答の前にRogerをつけてもいい。


⚠ Line up and wait = 滑走路上で待機せよ

「Line up and wait」は滑走路に進入して整列するが、離陸はまだするなという指示である。
交差滑走路の通過機や、前機の離陸完了を待っている場合によく使われる。

やりとり例

Tower: C-123A, line up and wait runway 27.
C-123A: Line up and wait runway 27, C-123A.

ここで勝手にスロットルを入れれば、事故は避けられない。


✋ Hold short of runway = 滑走路には入るな

「Hold short of runway XX」は、滑走路に絶対に進入してはならないという指示だ。
この命令のもとで数メートルでも進入すれば、重大な違反である。

やりとり例

Tower: Taxi to runway 27 via A, hold short of runway 27.
C-123A: Taxi to runway 27 via A, hold short of runway 27, C-123A.

この状態では、たとえ機長が前方に進もうとしても、コ・パイロットは周囲を警戒し、進入を止めるよう伝える責任がある。応答の前にRogerをつけてもいい。


🔥 実例:滑走路での誤解が生んだニアミス

2014年、アメリカの地方空港で「Line up and wait」と指示されたパイロットが、
「Cleared for takeoff」と誤認し、前方の滑走路へ加速。
その先には交差滑走路を横断中のプロップ機がいた。幸い、管制塔の声が間に合い衝突は回避されたが、あと5秒遅ければ100人以上の命が失われていたとされている。
2000年5月には、Air Liberté Flight 8807 の事故事例もある。

これはヒューマンエラーが起こした事故である。
常に管制塔からの指示が正しいとは言えない

実際に、正式な記録のない状態での地方空港などにおけるヒューマンエラーは、
数えきれないほど起きているのも事実である。


👁 視覚と声で、ダブルチェックせよ

滑走路が空いているかどうかは、無線のやり取りだけで判断してはならない。
管制塔も人間であり、誤認や送信ミスを起こすことがある。
目視で確認する。声に出して読み返す。仲間同士で照合する。

どれか一つが欠ければ、その瞬間にシステムは破綻する。
管制塔の言葉に従いながらも、最後の判断責任は常に操縦士にあると心得よ。

Cleared for takeoff」と「Line up and wait」の違い、説明できるか?

🧭 総まとめ:3つのフレーズ比較

指示意味滑走路進入離陸
Cleared for takeoff離陸してよい
Line up and wait整列し待機せよ
Hold short of runway進入してはならない

✅ 最後に一言

命を預かる現場では、「理解したつもり」が最も危険である。
自信がないとき、混乱したとき、風の音で聞き取れなかったときは、必ず聞き返せ。
“Say again.” は、臆病ではない。プロの証である。
あなたが「恥」を気にした瞬間に乗客の命は危険にさらされる。

ConfirmとAffirmativeの違いも要注意!

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP