航空英語
航空英語(Aviation English)とは、民間航空の世界で使われる国際言語(共通言語)である。世界のパイロットや航空管制官など、航空関係の業務に従事する人たちの共通言語となっている。
特にパイロットと航空管制官にとって無線通信上、英語は日常的であり必須である。
また、軍隊などでは秘匿性の関係から一部用語を変えたりしていることが多いが、基本的なことは変わらない。Wikipedia参照
航空英語概要
今日において、航空とは世界の物流、人流に欠かせないものとなってきている。
しかし、業界の発展と航空便の増加や需要の高まりは、それらに伴い事故や重要インシデントの発生という副産物も生まれた。
そんな中で「航空英語」の概要として以下のようなことが定義されている。
旅客・航空貨物運送業務、旅客運航業務、航空機の構造と整備、航空気象、航空力学、航空医学、ICAO通達文書、航空産業、航空保安、警備業務、航空無線・レーダー業務(管制)、空港施設、各種飛行援助施設業務などの分野で使われる広範な英語である。
これらの主な原因として各国の訓練、教育方針の差があることや何より「語学力」の差が顕著であった。
この「語学力=航空英語能力」の差により、パイロットや航空管制官たちのコミュニケーション能力において安全性などの観点から懸念が生じたため、ICAO加盟国において「航空英語」が広く受け入れられることとなった。
フォネティックコードについて
コミュニケーション不足で起きた航空事故
パイロットと管制官のコミュニケーション不足で起きた航空事故
1.テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故
2.ニューデリー空中衝突事故
これらの事故は一部の例ではあるが、パイロットや航空管制間の英語運用能力が十分でないために多くの人が死亡した。
これらの事故調査を踏まえ、ICAOはコミュニケーション能力や英語力の欠如が多くの事故調査において、重要な原因であることを認めており、国際的業務に従事する航空関係者は、一定水準(厳密には水準以上)の英語運用能力を証明するべく実地証明を義務付けた。
航空英語は難しい
難しいと聞くと何か躊躇してしまうかもしれないが、これは何も勉強方法や内容が難しいと言うわけではなく、その特異な構造ゆえに「発音・文構造・略語」など特殊性があるため、英語を公用語としている国の人たちでさえも最初は躓いてしまうという意味で「難しい」といえよう。
特に日本人は文化的、習慣的に英語に触れる機会が極端に少なく、英語力はあくまで「大学受験」や「就職に有利になるため」と言った感覚で勉強しているが「パイロット」として「航空管制官」として働くのであれば英語と航空英語は「話せて当然」になることを肝に銘じて欲しい。
こうしたコミュニケーションの問題を解決するためにICAO加盟国では「航空英語試験」などが行われている。
航空英語能力証明実地試験
日本では年に6回、東京都大阪で実地試験が行われている。
エアラインに就職する人や、国際線乗務を目指したい人は必ず取っておく必要がある。*応募資格で必須となっている場合が多い。
この試験を受けるとレベル1〜レベル6までの評価が出るが、航空会社のパイロットや管制官としての業務に就くには「レベル4以上」が必須である。*令和6年度航空英語能力証明実地試験
また、このレベルには各レベルに応じて有効期限が設けられている。
・レベル4=3年間
・レベル5=6年間
・レベル6=無期限
これらの有効期限からいかに「英語力」が必要なのか理解できるだろう。
またパイロットや航空管制官として働くには常に自己能力の向上が必要であることも肝に銘じて欲しい。
ICAO基準の英語試験
日本国内の英語能力証明として「航空英語能力証明」があるのに対して、ICAO基準の評価も存在する。
試験の内容などはさほど変わりがないが、海外で就労ビザなどを活用してパイロットとして働きたい場合などは必須となってくる。
例えば、レベル1〜レベル6まである中で、最低基準のレベル4は日本と同じ3年ごとの更新受験が義務付けられている。
またレベル4以上がOperationalと呼ばれ、パイロットや航空管制官が国際線での操縦(管制官による国際線とのやりとり)に従事するための最低基準と定められている。
なおレベル6は最高評価スケールとも言われ、更新受験が免除される。
なお、6段階のレベルの中に6つの評価基準があるがそのうち一つでもレベル3以下であれば、他の評価基準がレベル4を超えていたとしても不合格になる。
ICAO航空英語の6つの評価基準
ICAO基準の航空英語試験(航空英語能力証明)を受験し合格するには最低でもレベル4が必要と説明したが、それぞれのレベルは以下のように部類される。
レベル1:Pre-elementary 不合格/国際線不可
レベル2:Elementary 不合格/国際線不可
レベル3:Pre-operational 不合格/国際線不可
レベル4:Operational 合格 3年間有効
レベル5:Extended 合格 6年間有効
レベル6:Expert 合格 無期限
これらのレベルで4以上を取ることはエアラインパイロットとして働く上で必須条件である。
また、国際線で働くことを目標にするのであればレベル4以上ないと乗務することはできないが、そもそも国内線でも各航空会社は最低ラインとしてレベル4を求めてくる。
6つの評価基準
これらのレベル分けには厳密な評価基準が存在し、そのどれか一つでも合格基準に満たない場合は不合格となる。
下記はその6つの評価基準である。
1.Pronunciation(発音)
英語の絶対的基本とも言える発音はマストになる。
発音、会話のイントネーション、リズムや会話の強弱。これは基本的な事を抑えることで地域性による認識の違いを防ぐ役割もある。
2.Structure(文法)
航空英語は通常の文法とは違うが、基本的な文構造を理解しておくことで、緊急事態のような不足の事態に陥った場合にも相手に対し正しく意味を伝える必要がある。
3.Vocabulary(語彙力)
良く世間でも「語彙力がない」などと言い、単語力と勘違いする人もいるが、どちらかと言えば同音異義語、同音同意語を状況によって使い分けたり、不足の事態や特殊な環境下で正しい語彙で伝えることはとても重要である。
4.Fluency(流暢)
これに関しては人それぞれ会話の速度などもあるため基準を一概に示せないが、一定の速さで会話ができ、相手に正しく伝えること。これはATCにも同じことが言えるため日頃から練習することにより慣れてくる。
5.Comprehension(理解力)
いくら英語を話せても相手が話していること、表示されている分が理解できなければ話にならない。特に長文の内容を読み解き要約出来たり、簡単な図やグラフを見て要約及び解説できる能力が必要にもなってくる。
6.Interaction(対応力)
日本人が一番苦手としていることである。普段聞き慣れない単語やイディオム(慣用句)がくると、知っているふりをしてしまう。航空管制においては迅速かつ適切に応答しなければならないが、時として通常のATCとは違う言い回しをしてくる管制官もいるため対応力は必須である。大切なことは分からなければ再度聞くことや、復唱するなど会話を明確化することが重要で、これまでの航空事故も、この対応力がないがために起きていることも肝に銘じて欲しい。