航空英語における「via」

航空英語における「via」の正しい理解

「via」という単語を聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。何かのアイドルグループかパチンコ店のイメージなどは沸かないだろうか。
沸かないでほしい。
「via」とは日常英語では「through」「by way of」と同じく「〜経由で」という意味で使われる。しかし航空英語においては、単なる通過ではなく「必ずその経路を通らなければならない」という強い指定の意味を持つ。しかもこの via は、飛行中のルート指定だけでなく、地上走行(Taxi)の場面でも頻繁に登場する。今回は航空英語における via の用法を整理し、訓練生が混乱しやすいポイントを解説していく。

航空英語における「via」

Taxiでの via

まず、最も基本的な場面がTaxiである。グラウンドコントロールは、航空機を滑走路やスポットに誘導する際に「どの誘導路を経由するか」を明確に指示する。その際に登場するのが via だ。

Taxi で使う「via」— ポイント解説

例文

“Taxi to runway 16 via Alpha, Bravo.”

タキシーウェイ Alpha → Bravo の順で RWY 16 へ向かう。

“Taxi to stand 12 via Charlie.”

タキシーウェイ Charlie を経由して Stand 12 へ進む。

ポイント

  • via は経路指定。指示どおり 順番厳守 で通過する(例:A → D → M)。
  • スポット(スタンド/ゲート)へ向かう場合も 同じルール が適用される。
  • 聞き逃し・不明時は 滑走路を離脱し停止線を越えて停止“Say again” で確認する。

重要なのは、viaは経由点の指定であり、その通りに動かなければならない という点だ。パイロットの判断で別の経路を選ぶことは許されない。

さらに具体的な例

グラウンドが次のように指示したとする:

“Cleared taxi to runway 26R, via A-D-M.”

誘導路 Alpha → Delta → Mike の順を経由して RWY 26R に向かう。

これは出発時だけでなく、到着後にスポットへ戻る際にも同様に適用される。

もし聞き逃した、あるいは経路指定が理解できなかった場合、どうすればよいか。大切なのは「勝手に進まない」ことである。まずは滑走路を出て停止線を越え、安全な位置で機体を止める。そして落ち着いて “Say again” とコールし、再度指示を受け直せばいい。訓練生にとって「聞き返す」ことは恥ずかしいことではない。むしろ安全確保のためには積極的に行うべき基本動作である。

Routeでの via

Routeでの「via」実例

実際のATCでの指示例:

“Cleared to Narita via SEALS TWO departure, then flight plan route.”

必ず SEALS TWO SID を経由して成田へ向かう。

“Proceed via JYOGA intersection, then direct.”

まず JYOGAインターセクション を経由し、その後はダイレクトで飛行する。

ポイント

  • via = 経路指定。「自由に通過してもよい」ではなく「必ず通過しなければならない」。
  • フライトプランに書かれていても、ATCが再度「via〜」と指示するのは経路を強調するため。
  • 確実にそのポイントを踏むよう求めていることを忘れてはならない。

一般英語との比較

日常英語における via は through とほぼ同義である。“I went to Osaka via Kyoto.” といえば、「京都を経由して大阪に行った」という意味で、単なる通過を指す。しかし航空英語における via は、「through」に近い意味でありながら、必ずそのポイントを通ることを義務付けるニュアンスが強い。

つまり、学習の際には「via = must pass through」と理解しておくと誤解が少ない。

発音の違い

さらに注意したいのが発音である。地域によって via の発音が異なるのだ。

  • ヴィア(/ˈviː.ə/):イギリス英語圏やヨーロッパで多く聞かれる。
  • ヴァイア(/ˈvaɪ.ə/):アメリカ英語圏で一般的。

どちらも正しい発音であり、航空無線でも両方のパターンが存在する。そのため、訓練生は「聞き慣れない発音=別の単語」と勘違いしないように注意することだ。復唱(readback)の際は自分の慣れた発音で問題ない。ATCは意味を理解しているので気にする必要はない。

学びのポイント

学びのポイント

  • Taxiのvia は誘導路の経由指定。
  • Routeのvia はウェイポイントやSID/STARの経由指定。
  • 一般英語の “through” と同じ意味だが、航空英語では「必ず通過」のニュアンスが強い。
  • 聞き逃したら勝手に動かず、停止してから “Say again”
  • 発音は「ヴィア」「ヴァイア」両方あるので柔軟に対応する。

結論

via は航空英語で非常にシンプルな単語でありながら、訓練生が混乱しやすい用語のひとつだ。Taxiでは誘導路を経由して進むことを示し、RouteではウェイポイントやSID/STARを経由することを示す。日常英語と同じ「経由して」ではあるが、航空英語では「必ず通れ」という義務のニュアンスを持つことを忘れてはならない。

聞き逃したら躊躇せず“Say again”。発音の揺れも含め、柔軟に理解して行動に移すことが、パイロットに求められる基本姿勢である。

航空英語における「via」

参考サイト

航空英語「via」の理解を深めるための信頼できる外部リンク

ICAO(国際民間航空機関)

航空英語や標準用語を含む国際基準を策定している公式サイト。

公式サイトへ

FAA Handbook

Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge。クリアランスやルート指定の基本を学べる教材。

読む

Skybrary

航空安全データベース。管制用語やインシデント事例が豊富で、viaの誤解例も参照可能。

参照する

AOPA(Aircraft Owners and Pilots Association)

パイロット訓練生向けの解説記事が多数。航空英語や無線手順の学習に役立つ。

公式サイトへ

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