空の安全を守る “ing” の力 — 航空英語で絶対に知っておくべき使い分け
皆さんは英検3級を甘くみていないだろうか?
もしそうならその考えは今すぐ捨てて自分の英語力がどれくらいあるか、そしてそれが航空英語にどれくらい役に立つかを考え直して欲しい。
なぜか?「中学生英語は空の安全を守ることにつながる。」航空英語はIELTSや英検ほど文法的に複雑ではない。しかし、Do / Does / Did のような「誰が、いつ、何をするのか」という基礎構造を理解していなければならない。もし苦手意識があるなら、まずは ing の使い方 を学び直すべきだ。未来も ing、すでにしていることも ing、確定した未来のスケジュールも ing、過去の描写にも ing。さらに、時制だけでなく名詞や形容詞としても ing を使える。この幅の広さを知ることが、安全に直結する。
1. ing の基本的な役割
- 進行形:今まさに行っている動作(例:We are climbing through 2,000 feet.)
- 未来の予定:確定したスケジュール(例:I’m flying to Osaka tomorrow.)
- 過去の描写:ある時点で進行していた事実(例:We were climbing when the TCAS alert came on.)
ing は単なる進行のマークではない。状況の「タグ付け」を行い、認識のズレを防ぐ役目を果たす。
ちなみに過去の言い訳でも使える便利なingだ。
I was trying to call~のように「やぁ、電話しようとは思ってたんだけど、、、」のように。
2. 名詞(動名詞)としての ing
ing は動作を名詞化し、主語・目的語として扱える。
- 日常英語:I like playing tennis.(テニスをすることが好きだ)
- 航空文脈:Holding short is required.(待機することが必要だ)
ATCでは「何をすること」が必要かを短く明確に示せるため、動名詞は有効である。
3. 形容詞(現在分詞)としての ing
ing は名詞を修飾し、動作状態を短く示せる。
- 日常英語:Doing your job seriously is one route to promotion.(真剣に仕事をすることは昇進への一つの道だ)
- 航空文脈:Climbing aircraft(上昇中の航空機)、Approaching traffic(接近中のトラフィック)
無線上で対象を素早く特定する上で、現在分詞は有効な「説明タグ」となる。
恋人に言うなら、Treating my girl as well is the most important communication to keep our relationships.
4. ATCでの実務例と注意点
指示と状況報告の違い
- 指示:Climb to 3,500 feet.(これから上昇せよ) — 動詞原形+to
- 状況報告:Climbing to 3,500 feet.(上昇中である) — 進行中の事実
Confirm を挟むときの正しい設計
ATC:Cessna 123A, confirm climbing to 3,500 feet?
確認 → ing(事実の確認)
Pilot:Affirm, climbing to 3,500 feet.
確認の問いには事実を示す ing で返す。一方、指示には原形でリードバックする。設計を混同すると誤認を招く。
5. 誤用が引き起こすリスク
指示に対して “Roger that 123A, climbing to 5,500 feet.” と返すと、「すでに上昇中」と解釈される恐れがある。本当はこれから実行するだけでも、ATCや他機は「もう動いている」と読んで判断が遅れる。高度指示の誤認は衝突リスクを生み、レーダー表示と無線内容の不一致は管制判断を遅らせる。空ではこの数秒が命取りである。
6. 安全のための ing 返答テンプレ集
用途 | 標準フレーズ |
---|---|
指示へのリードバック | Roger, 123A, climb to 3,500 feet. |
確認への回答 | Affirm, 123A, climbing to 3,500 feet. |
自発の状況報告 | 123A, climbing through 2,500 for 3,500 feet. |
否定(確認の否定) | Negative, 123A, maintaining 2,000 feet. |
指示の再確認 | 123A, confirm climb to 3,500 feet? |
ルールは明快である。指示→原形、確認・報告→ing。この切り分けが混乱を断つ。
参考リンク
・ICAO(国際民間航空機関)ATCフレーズ標準資料
・FAA(米連邦航空局)Pilot/Controller Glossary
7. まとめ
ing の使い分けは英語力の問題ではなく、安全意識の問題である。中学生レベルの文法が、空では命を守るツールになる。進行形、未来、過去、名詞、形容詞、すべての ing を理解し、指示と状況報告を正確に区別することが航空英語の本質である。
ちなみにこのingだが海外の英語圏のATCではかなり色んなパターンで頻繁に聞くことになる。
わからないときはSay again.

ingとセットで見てほしいConfirmとAffirmativeの違い。