航空英語のRogerとWilco

RogerとWilco、ちゃんと使い分けているか。

混乱しやすい航空英語の基本表現

航空英語には、シンプルだが意味の異なる言葉が数多く存在する。なかでも「Roger」「Wilco」は混同されやすい基本表現だ。
特にFPSゲームが好きな人たちはこの「Roger」を聞くことは多いはずだ。シンプルな言葉ゆえに軽視するパイロットや訓練生が多いが、かなり危険だ。
受信確認と意思表明。
この違いを理解せずに使えば、誤解や重大インシデントを招くおそれがある。

本稿では、この2語の違いを実例とともに丁寧に掘り下げていく。

航空英語のRogerとWilco

RogerとWilco。似ているようで全然違う。

Roger=「了解」。でも実は…

「Roger」とは、“I have received all of your last transmission”(最後の通信を受信した)の意である。
つまり「聞こえた」という 受信確認 に過ぎず、「理解した」「指示に従う」といった意味は含まれていない。

ATC(航空交通管制)との交信において、指示に対して「Roger」とだけ返答する場合、「了解した」とは言っていない。
そのため、聞き流されたのか、理解していないのか、行動に移すつもりなのか が不明確になり、誤解を招くことがある。

Wilco=「了解、かつ従う」

一方で「Wilco」 “Will comply” の略であり、「その指示を理解し、従う」という 行動の意思表示 を含んでいる。

Rogerが受信の確認にとどまるのに対し、Wilcoは一歩踏み込み、「その通りに実行する」と伝える表現である。
ゆえに、「Roger Wilco」と重ねて言うのは冗長であり、現代の航空通信ではWilco単体で十分とされる。

余談だが、戦闘機のパイロットが隊長機に続く際や、目標指示機からの攻撃指示を受けた際にも、「Roger」ではなく「Wilco」と返すのが通例である。
これは単に「了解」したという意味ではなく、「従う準備ができている」という行動の意思表示であり、上空の他の機体に対して、自機のintension(行動意図)を明確にする役割も果たしている。

実践例と事故事例から学ぶ

  • 例1:
    ATC「Descend and maintain 3,000 feet.」
    Pilot「Roger.」→ 実行されず → 管制混乱、接近警報作動
    → Rogerは「行動する」とは伝えていないため、誤解が生じた
  • 例2:
    ATC「Turn left heading 250.」
    Pilot「Wilco.」→ 意図と行動を明確に伝達
    → ATCは安心してトラフィック管理を続けられる

結論|“理解”と“行動”は分けて伝えるべし

RogerとWilcoは似て非なる言葉である。受信しただけなのか、理解したのか、行動に移すつもりなのか——
航空無線では、その違いが命を分ける判断材料になりうる。
ちなみに「Roger That.」もよく耳にするがこれもあくまで「管制からの指示や情報提供に対して、その内容を理解した。」の意味にすぎず、混同してる訓練生は多い。

もし他の答え方をするのであれば「Cessna 123C, Roger that. Following your order and climb to 3500ft.」のような答え方でも問題ではない。

時として一言の勘違いや認識のずれで大惨事を引き起こす航空英語であるが、世界の航空事故の原因の多くがこの英語力からもきていることに目を背けてなならない。
だからこそ、空の上で使う言葉は常に 正確に、簡潔に、意図を含んで伝える 必要がある。

Rogerの語源もチェック

関連する基本表現もマスターしよう

航空英語のRogerとWilco

混同してしまうConfirmとAffirmativeはこちら

航空英語のRogerとWilco

Say againについての記事はこちらから

航空英語TOPページへ

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP