航空英語の”Take off”

“Cleared for takeoff”と”Line up and wait”の違いとは?
|離陸時の航空英語を正しく理解

皆さんは、航空機の離陸といえば “Take off” が真っ先に思い浮かぶかもしれない。
もちろんそれで間違いではない。だが、実際に飛行機が滑走路を離れるまでには、管制塔とのいくつかのやり取りが必要になる。まずは航空英語とは何か。に関しても今一度再認識をしてほしい。

航空英語の"Take off"

曖昧な指示や把握ミスが大事故にもつながる。

その中で最も頻繁に使われるのが
“Cleared for takeoff”“Line up and wait”

この2つの違いを曖昧にしたままフライトに臨むと、大事故の引き金になる可能性がある。
だからこそ、今回も冒頭で先に伝えておく。
ちなみにCleared to landも別記事で解説をしていく。離陸があれば同時に着陸に向けて準備が行われている証であり、パイロットは常にそれらのことを考えながら行動しなければならない。

わからないときは、ためらわず “Say again.”
プライドより命だ。

離陸に関する基本フレーズ

ではここで航空機が離陸までの間によく用いるフレーズを2つ紹介する。

✅ 1. “Line up and wait.”

意味: 指定された滑走路に進入し、離陸許可が出るまで滑走路上で待つ。
使用タイミング: 離陸許可の“直前段階”。進入は許可されているが、離陸は未許可。

例文:
Tower: “ANA 214, line up and wait runway 16R.”
Pilot: “Line up and wait 16R, ANA 214.”

この段階で離陸滑走に入ってしまえば、それは明確な違反であり、Runway Incursion(滑走路侵入)として報告対象となる。
特に視界不良時や夜間は、前機の動きが確認しづらく、誤認による事故に直結しかねない。

✅ 2. “Cleared for takeoff.”

意味: 離陸滑走が正式に許可された状態。
使用タイミング: “Line up and wait”の後、管制塔から改めて指示が出される。

例文:
Tower: “ANA 214, wind 150 at 5, runway 16R, cleared for takeoff.”
Pilot: “Cleared for takeoff 16R, ANA 214.”

この一言を聞き逃して“なんとなく”で動き出した場合、最悪のケースでは他機との接触、滑走路上での衝突に繋がる。
“滑走路にいる”ことと“離陸していい”ことは、まったく別のフェーズである。

補足表現と周辺知識

  • “Hold short of runway XX” - 滑走路に進入する前に、手前で停止せよという指示。
  • “Traffic departing ahead” - 前方に離陸中の航空機がいる。
  • “Position and hold”(旧表現)- 現在ではICAO準拠で “Line up and wait” が標準。

なぜ“間違えると危険”なのか?|実際の事例から学ぶ

過去には、“Line up and wait”“Cleared for takeoff”と誤解し、前機がまだ離陸中の滑走路へ進入してしまい、急ブレーキを余儀なくされたケースがある。

このような事例は、管制側のミスだけでなく、言葉の理解不足や確認の怠慢が重なることで起きている。

英語が母語でないパイロットにとって、たった一言の判断ミスが命取りとなる可能性がある。

結論:離陸時の英語は“命の交信”である

航空英語は、単なる言語ではない。
それは、空の秩序を守るためのルールであり、命をつなぐ最後のやり取りである。
Hold short of runwayなどについては次回の記事で解説していく。

「聞こえた気がする」は、空では通用しない。
不安があれば、ためらわずに言うべきだ。
“Say again.”
それが最もプロフェッショナルな行動である。

参考リンク

Skybrary公式レポート(PDF)はこちら

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