MSLとAGLの違いがわかるか?使い分けと実例
AGAは薄毛治療だから関係はない。
航空英語とはATCとのやりとりだけではなく、チャートから得た情報を瞬時に判断し、実行に移す能力の総体である。中でもMSL(Mean Sea Level)とAGL(Above Ground Level)の区別は初歩的に見えて、慣れたパイロットでもふとした拍子に取り違えることがある。本稿では、その違いと現場で起こりがちなミス、避けるための思考手順を解説する。
基本定義
MSLは平均海面を基準にした高度で、航空路高度、チャートの標高、ATCの高度指示は原則すべてMSL基準で表現される。
AGLはその地点の地表からの高さで、障害物回避や気象の表現(雲底やCeiling)など安全余裕の議論に直結する。
結論として「通常運用の高度はMSL、地面との余裕や天気はAGL」という切り分けが土台になる。

どこで何が基準か
- ATCの高度指示・航空路・MEA/MSA:MSLである。管制が「MSLで」と明言することはまずないが、前提はMSLである。
- 地形標高・障害物標高(塔・山・風車):チャート上はMSLで記載される。
- 気象(Ceiling / Cloud base など):AGLで表すのが通例である。
- 進入のミニマ:DA/MDAは多くがMSLで示され、括弧内にDHなどAGL換算が併記されることがある。
MSL(Mean Sea Level)
平均海面を基準にした高度。
- ATCの高度指示
- 航空路・チャート標高
- 進入ミニマ(DA/MDAなど)
=「海抜いくつか」で表す高度
AGL(Above Ground Level)
地表を基準にした高度。
- 障害物回避の余裕
- 気象(Ceiling/Cloud base)
- Decision Height(DH)
=「地面からどれだけ高いか」で表す高度
典型的に起こるミス
VFRクロスカントリーの読み違い
地形点の「標高1,200ft」をAGL感覚で捉え、「安全のため+3,500ftで飛ぶ」と思考した結果、実際にはMSL 4,700ftに上がって制限空域やTCAに不用意に入ってしまう事例がある。標高値はMSLであり、自機の計器高度(MSL)と同じ基準軸で比較しなければならない。
“MSA 3,500ft”の誤解
アプローチチャートのMSAはMSL基準の最低セクター高度である。地表が既に1,500ft高地なら、MSA 3,500ftでも地面からの余裕は2,000ftに過ぎない。MSAをAGLの安全余裕と誤認すると、尾根越えで余裕不足に陥る。MSAは“地面からの差”ではなく“海抜の最低値”だと刻み込むべきである。
気象とミニマの基準混在
ATISで「Ceiling 800ft」はAGLを意味する。一方でアプローチのDA 2,600ftはMSLである。両者を混在させると、降下開始や復行判断のタイミングがずれる。雲はAGL、ミニマはMSLという枠組みを崩さないことが肝要である。
このような事を聞いて「そんな事ないだろ。」と思った貴方。
真っ先に同じ間違いをする事だろう。
チャートの見方・思考手順
- 基準点を口に出す:「今見ている数値はMSLかAGLか」を自問自答する癖をつける。
- 同じ軸で比較する:自機高度(MSL)と山の標高(MSL)を比較、AGLの議論に切り替える時は必ず「差分」に置き換える。
- 余裕は“差”で考える:障害物クリアランスや雲底はAGL差で評価する。
- 境界線を先に見る:制限空域・TCA・Class C/Dの上限下限をMSLで確認し、上昇や地形迂回の前に侵入可否を判断する。
- 温度・気圧補正を意識する:計器はMSLを示すが、極端な温度低下時は真高度が下がる。山岳地帯や寒冷時は保守的に余裕を積むべきである。
航空英語の実用表現
- Minimum enroute altitude (MEA): 5,500 feet MSL.
- Minimum sector altitude (MSA): 3,200 feet MSL.
- Ceiling 800 feet AGL; cloud base reported at 1,000 feet AGL.
- Decision altitude: 2,600 feet MSL (decision height 200 feet).
- Maintain VFR at or above 4,500 feet MSL; remain clear of controlled airspace.
表現自体は単純でも、語の後ろに付く“MSL/AGL”が意味全体を決定する。読み手側が基準を取り違えれば、同じ英文でも正反対の操縦判断に転ぶ。
よくある落とし穴の再整理
- 「このエリアはミニマムMSL 3,500ft」なのに、チャートのGround Level(標高)に3,500を“足して”飛ぶ癖は危険である。標高はMSL、ミニマムもMSLであり、足し算の発想そのものが誤りである。
- 雲底・Ceilingを見て「あと300ft下げられる」と考える時は、自機のAGL差で評価する必要がある。計器の数字だけを見て下げると地形の突起に吸い寄せられる。
- ILSのDAと、TDZEからのDHを混在させると判断点がずれる。DAはMSL、DHはAGLとしてセットで把握するべきである。
結論
高度の取り違えは、単なる読み方の癖ではなく衝突と侵入違反に直結するリスクである。運航ではMSLとAGLのどちらを扱っているのかを常に明示化し、同じ基準軸で比較し、差で安全余裕を評価するようにする。ATC・チャートはMSL、気象と障害物はAGLという枠を崩さず、境界線と余裕を先に確認する習慣を持つことだ。MSLとAGLの基準を正しく使い分け、判断と行動に一貫性を持たせるようにする。
空の安全は「基礎」に尽きる。
自分がいくら飛行時間1000時間を越えようと基本に立ち返ることが空の秩序を守るのだ。
MSL(Mean Sea Level)
平均海面を基準にした高度。
- ATCの高度指示
- 航空路・チャート標高
- 進入ミニマ(DA/MDAなど)
=「海抜いくつか」で表す高度
AGL(Above Ground Level)
地表を基準にした高度。
- 障害物回避の余裕
- 気象(Ceiling/Cloud base)
- Decision Height(DH)
=「地面からどれだけ高いか」で表す高度
今一度よく見返してほしい。
参考サイトは下記のリンクから
まずは航空英語に必要な基礎力を知る。