NOTAMの基本構造
Q-code(分類コード)
NOTAMの冒頭に付くQで始まる5文字のコードは、その通知が何に関するものかを示す分類子である。滑走路、灯火、空域制限など、内容ごとにコードが割り当てられている。
発行対象
代表的な発行対象は、滑走路閉鎖・灯火故障・障害物・空域の一時的制限など多岐にわたる。「普段と違う何か」が起きたとき、それを知らせるための仕組みだと理解しておくとわかりやすい。
有効期間
開始時刻と終了時刻がUTCで明記される。中には「PERM(恒久的)」や「UFN(until further notice:追って通知するまで)」という表記もあり、終了時刻が定まっていないケースもある。
NOTAMは天気予報のように「変化を予測する」情報ではない。すでに決定・発生した運用上の変化を、パイロットに周知するための通知である。
NOTAMがカバーする領域の広さ
NOTAMは昨今、特有の特徴がある。それがドローンに関するNOTAMである。
ドローンNOTAM
ドローンは航空法上、航空機の部類に入り、重量などで細分化されている。ドローンが一定高度で飛行する場合、NOTAMが発出される。特に150m以上の飛行をする場合は発せられる。
この150mという数字には理由がある。通常の有人機は空港周辺などを除き、地上150m以上の高度で飛行することが多い。ドローンの飛行可能高度の上限も同じ150mに設定されており、有人機とドローンの空域を垂直方向に分離するという設計になっている。150mという境界線は、単なる数字ではなく「上下で棲み分けるための線」だと理解しておくとよい。
だからこそ、もし飛行中にドローンを目視した場合は、管制やレーダーに報告することが重要だ。境界線の存在を知っている者同士でも、実際にその場で何かを見かけたという情報は、他の交通にとって価値のある一次情報になる。
その他の特殊な情報
その他にも、軍用機の例外的な飛行、軍艦などの訓練情報、ロケットの発射など、NOTAMが扱う情報は多岐にわたる。滑走路の閉鎖や灯火の故障のような「地味な運用情報」から、ロケット発射のような「非日常の一大イベント」まで、同じ形式で並列に発行される。この幅の広さこそが、NOTAMを読み飛ばしてはいけない理由でもある。
ちなみに、嫁の機嫌の注意報はNOTAMでは発せられない。
NOTAMのフォーマットを読み解く
実際のNOTAM電文を例に、どの部分が何を意味しているのかを一つずつ分解していく。
NOTAM Example
A0123/26 NOTAMN
Q) CZEG/QMRLC/IV/NBO/A/000/999/5325N11305W005
A) CYYC B) 2608241200 C) 2608261800
E) RWY 16L/34R CLSD DUE MAINT
NOTAM番号・種別
A0123/26はその年の123番目の通知であることを示す。NOTAMNは新規発行を意味する(変更はNOTAMR、取消はNOTAMC)。
Q)分類コード
FIR(飛行情報区)、Q-code、影響範囲、座標などが凝縮されている。ここを読めなくても本文(E項)で概要は把握できるが、慣れれば分類の見当がすぐつくようになる。
A) B) C)対象・有効期間
A) CYYCは対象空港。B)が開始時刻、C)が終了時刻(いずれもUTC)を示す。この例では8月24日12時から26日18時まで有効。
E)本文
E)以降が実際の通知内容。この例では「RWY 16L/34R CLSD DUE MAINT(滑走路16L/34Rが整備のため閉鎖)」という、最も実務的に重要な情報が書かれている。
よくある間違い・見落とし
「長すぎて読まない」問題
1回のブリーフィングで、NOTAMが十数件・数十件と表示されることも珍しくない。読みにくさゆえに流し読みしてしまうことが、NOTAM最大の落とし穴である。これはパイロットの間でも広く知られた悪名高い性質だ。
重要な情報が埋もれる
灯火の球切れのような軽微な通知と、滑走路閉鎖のような重大な通知が、同じフォーマットで並列に表示される。重要度に差があるにもかかわらず、見た目の優先順位がつかない構造そのものが見落としを生む。
MOAのアクティブ時間帯を確認し忘れる
MOAが当日稼働しているかどうかは、NOTAMで確認できることが多い。「MOAは常に危険」ではなく「今日は稼働しているか」を確認する習慣がなければ、判断の精度は上がらない。
4つの情報源の役割の違い
ここまで整理してきた4つの情報源を、あらためて役割ごとに並べておく。
TAF(未来の天候)
空港周辺の今後数十時間の気象予報。
METAR(現在の天候)
空港の現在の観測実況。
ATIS(現在の運用状況)
気象情報に加え、使用滑走路など運用面も含めた音声放送。
NOTAM(運用上の変化・制限)
天候以外の、滑走路・灯火・空域・障害物などに関する通知。
TAFで見通しを立て、METARで実況を確認し、ATISで運用状況を把握し、NOTAMで前提そのものが変わっていないかを確認する。この4つが揃って初めて、フライトの判断材料が整う。
実際にNOTAMを読んでみる
ここまでの知識を踏まえて、複数のNOTAMを実際に読み解いてみる。
Example ①(ドローンNOTAM)
A0456/26 NOTAMN
A) CYYZ B) 2608250600 C) 2608252200
E) UAS OPS WI 3NM RADIUS OF 434500N0793800W
SFC-500FT AGL
指定座標を中心とした半径3マイル、地表から500フィートまでの範囲でドローン運用が行われることを示している。有人機はこの空域を通過する際、見張りを強化する必要がある。
Example ②(灯火故障)
A0789/26 NOTAMN
A) CYVR B) 2608240000 C) PERM
E) RWY 08L PAPI U/S
PAPI(進入角指示灯)が使用不可であることを示す。終了時刻がPERM(恒久的)となっており、当面の間は復旧予定がないことがわかる。進入時の高度管理をより慎重に行う必要がある。
この2例からわかるのは、NOTAMの本文(E項)を読むだけで「何が」「どこで」「いつまで」影響するのかが具体的にイメージできるということだ。フォーマットに慣れてしまえば、決して読み解けない情報ではない。
オーラル試験での対策
口述試験ではNOTAMの定義だけでなく、どう確認し、どう判断に反映するかまで説明できるかが問われる。以下は代表的な質問と解答例である。
Examiner:
What is a NOTAM, and how is it different from a weather report?
Pilot:
A NOTAM is a notice containing information about changes to aviation facilities, services, or hazards, such as runway closures or unlit obstacles. Unlike METAR or TAF, it is not related to weather but to operational conditions.
Examiner:
If you see a drone during flight, what should you do?
Pilot:
I would report the sighting to ATC or the appropriate facility as soon as possible, including the location, altitude, and time observed, so other aircraft can be alerted.
Examiner:
How would you review NOTAMs before a flight?
Pilot:
I would review all NOTAMs relevant to my departure, route, and destination airports, paying close attention to runway closures, navigation aids, and any temporary airspace restrictions.
まとめ
NOTAMは、天候とは違う種類の「変化」を伝える情報である。滑走路の閉鎖から、ドローンの運用、軍艦の訓練、ロケットの発射まで。昨日まで当たり前だった前提が、今日は崩れているかもしれない。それを教えてくれるのがNOTAMだ。
読みにくく、流し読みしたくなる気持ちはよくわかる。しかし重要な情報ほど、地味な文字列の中に埋もれていることを忘れないでほしい。
TAFが未来、METARが現況、NOTAMが飛行に関する安全情報だとしても、それらの情報から嫁の機嫌や家庭の秩序までは知ることはできない。ここは常日頃、神経をすり減らしながら生きていかないといけないのが辛いところだ。
よくある質問
Author
谷口 一貴 / Kazuki Taniguchi
株式会社SMART FLIGHT 代表取締役
元海上自衛隊潜水艦乗り。退官後、アメリカのフライトスクールでパイロットライセンスを取得。カナダ・アメリカを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察し、30回以上のカナダ渡航で航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。訓練生がつまずく要因が英語であり、その後のキャリア・安全性にも英語が直結していることを現場の声から実感。この思想はほぼ全ての航空企業・フライトスクールから強い共感を得ており、パイロットを目指す前に英語によるマインド構築が何より大切であると確信している。
→ プロフィール詳細Last Updated: 2026.08.25