TAFとは何か

TAFとは何か

TAFとは何か

当たるかどうかより、備えられるかどうか。

TAFを知ることは先の安全につながる

ATISやMETARが「今、空港がどうなっているか」を伝える情報だとすれば、TAF(Terminal Aerodrome Forecast)は「これから空港周辺がどう変化していくか」を伝える情報である。

フライトプランを立てる段階で最初に目を通すのがこのTAFだ。離陸時点の天候だけでなく、到着予定時刻の天候までを事前に読み取れるかどうかが、フライトの安全余裕を大きく左右する。

TAFとは何か

TAFは未来を的中させるための道具ではない。変化に備えるための道具である。この前提を理解しているかどうかで、TAFの読み方そのものが変わってくる。

TAFの基本情報

TAFを実際に読み解く前に、まずは押さえておくべき3つの基本を整理する。

対象範囲

空港を中心としたおおむね半径5マイル前後の局地的な気象を対象とする。空港全体を覆う予報ではなく、あくまで滑走路周辺のピンポイントな予測である点を理解しておく必要がある。

有効期間

日本国内では概ね30時間先までを予測対象とし、6時間おきに更新・発表される。訓練国によって有効期間や発表間隔は異なるため、飛ぶ国・空港ごとの運用を確認する習慣が重要になる。

METARとの違い

METARが「今、観測された事実」であるのに対し、TAFは「これから起こると予測される変化」である。両者は対になる情報であり、どちらか一方だけでは判断材料として不十分だ。

出典:気象庁の公開情報を参考に構成。

TAFのフォーマットを読み解く

実際のTAF電文を例に、どの部分が何を意味しているのかを一つずつ分解していく。

TAF Example

TAF CYYC 241738Z 2418/2524
24015G25KT P6SM BKN050
FM250100 27010KT P6SM SCT040
TEMPO 2418/2422 4SM -SHRA BKN025
PROB30 2500/2503 1SM TSRA BKN010CB

地点略号

ICAOが定める国際4文字コードで空港を特定する。例ではCYYC(カルガリー国際空港)。国内なら羽田はRJTT、成田はRJAAといった形で表される。

発表時刻

協定世界時(UTC)の6桁+Zで表記される。例の241738Zは「24日17時38分UTCに発表」を意味する。

有効期間

日付+時間帯の形式で示される。2418/2524は「24日18時から25日24時(=翌26日00時)まで有効」を意味する。

基本予報

風向風速・視程・雲の状態が続く。24015G25KTは「240度から15ノット、突風25ノット」、P6SMは「視程6マイル超」、BKN050は「雲底5,000フィートにBroken」を意味する。

TAFのフォーマットはICAO(国際民間航空機関)の基準に基づいており、世界中どこでも共通のルールで読み解ける。

変化群コードの意味と違い

TAFの本当の価値は、基本予報そのものよりもこの先どう変わるのかを示す変化群にある。先ほどの例文にも含まれていた4つのコードを、意味の違いを軸に整理する。

FM(From)

急激な変化

指定時刻を境に、天候が1時間以内でほぼ一気に切り替わることを示す。例のFM250100は「25日01時から新しい状態に完全に切り替わる」という意味になる。

BECMG(Becoming)

緩やかな変化

指定された時間帯(目安として2時間程度)の中で、天候が徐々に移行していくことを示す。FMのような一気の切り替わりとは異なり、変化の途中経過が続く点に注意が必要だ。

TEMPO(Temporary)

一時的な変化

指定期間の中で、断続的・一時的に該当の状態が現れることを示す。常時その状態になるわけではないが、いつ発生してもおかしくないという前提で扱う必要がある。

PROB(Probability)

発生確率

その状態が発生する確率を数値で示す。PROB30なら30%の確率を意味する。確率が低く見えても、内容が雷雨(TSRA)など重大な現象の場合は軽視できない

よくある間違い・注意点

変化群コードの意味を知っていても、読み方を誤ると判断を誤る。訓練生が特に陥りやすい4つの落とし穴を整理する。

TEMPOを「大したことない」と軽視してしまう

「一時的」という言葉の響きから、TEMPOを軽く受け取ってしまう訓練生は多い。しかし一時的に発生するタイミングは予告されない。ちょうど進入のタイミングでTEMPOの状態に当たる可能性を常に想定しておく必要がある。

BECMGの開始・終了タイミングを誤解する

BECMGは「指定時刻に切り替わる」のではなく、指定された時間帯のどこかで移行が完了するという意味である。開始直後から新しい状態になっていると誤解すると、実際の空とのズレに気づけない。

PROB30・PROB40を無視して判断してしまう

「30%だから起きないだろう」という判断は危険である。特にTSRA(雷雨)やCB(積乱雲)を伴うPROBは、確率の低さよりも内容の重大さを優先して読むべきだ。

「TAFさえ見ておけば安心」と思い込む

TAFはあくまで予報であり、実況(METAR)とズレることは前提として扱うべきである。TAFを確認したことで安心してしまい、直前のMETARやATISの確認を怠ることが最も危険な習慣になる。

TAFとMETAR・ATISの使い分け

TAFだけで判断を完結させるのではなく、性質の異なる3つの情報を役割ごとに組み合わせることが実務の基本になる。

TAF(未来)

空港周辺の今後数十時間の気象予報。フライトプランニングの段階で最初に確認する情報。

METAR(現在の実況)

空港の現在の観測データ。TAFの予報が実際に当たっているかどうかを確認するための照合材料になる。

ATIS(運用状況)

気象情報に加えて、使用滑走路や運用上の注意事項まで含めた音声放送。管制と通信する直前に取得する情報。

TAFで大枠の見通しを立て、METARで実況とのズレを確認し、ATISで直前の運用状況を把握する。この三段構えの確認が、天候変化に対する余裕を生む。

実際にTAFを読んでみる

ここまでの知識を踏まえて、悪天候を含むTAFを実際に読み解いてみる。

TAF Example

TAF CYYZ 241730Z 2418/2524
22012KT P6SM SCT030
BECMG 2420/2422 25018G28KT 4SM -SHRA BKN020
TEMPO 2422/2503 2SM TSRA BKN008CB
PROB40 2503/2506 1SM +TSRA OVC005CB

出発時点(18時台)

風220度12ノット、視程6マイル超、雲は3,000フィートにScattered。この時点では特に問題のない天候である。

20〜22時にかけて(BECMG)

風が強まり突風28ノット、視程4マイルへ低下、弱いにわか雨を伴う雲2,000フィート。徐々に状態が悪化していくタイミングだ。

22時〜翌3時(TEMPO)

断続的に視程2マイル・雷雨・雲底800フィートCBという厳しい状態が繰り返し現れる可能性がある。この時間帯の到着・出発計画は特に慎重な判断が求められる。

翌3〜6時(PROB40)

40%の確率で視程1マイル・激しい雷雨・雲底500フィートCBという最も警戒すべき条件が発生し得る。確率は40%だが、内容の深刻さから軽視できない。

この例からわかるのは、出発時点の天候だけを見て安心してはいけないということだ。到着予定時刻がTEMPOやPROBの範囲に重なる場合、フライトプラン自体を見直す必要が出てくる。

実際のTAFはNAV CANADAFAAが公開する航空気象情報から確認できる。

オーラル試験・チェックライドでの落とし穴

口述試験ではTAFの用語を単に暗記しているかではなく、その違いを説明し、判断に結びつけられるかが問われる。以下は代表的な質問と解答例である。

Examiner:
What is the difference between TEMPO and BECMG in a TAF?

Pilot:
TEMPO indicates temporary, intermittent changes that may occur during a period, while BECMG indicates a gradual and permanent change that takes place within a specific time window.

Examiner:
If a TAF shows PROB30 for thunderstorms during your arrival time, how would that affect your decision?

Pilot:
Even though the probability is only 30 percent, I would still plan for the possibility of thunderstorms because the potential consequences are severe. I would check updated METARs closer to my arrival time.

Examiner:
Is a TAF a guarantee of the actual weather?

Pilot:
No, a TAF is a forecast, not a guarantee. I would always cross-check it with the current METAR and ATIS before and during the flight.

「身近でありながら遠い分野」

TAFでもATISでもMETARでも、一見すると難しそうに感じる。しかし世界の航空法や運用はICAOを中心として統一されている。これはどういうことかというと、「必要最小限の情報で伝える」という重要性と、ATCでの基本原則である「明瞭・簡潔」とも近いものがある。

私は多くの訓練生を見てきた中で、気象関係で躓く人は実に多い。なぜか。「身近でありながら遠い分野」だからだ。晴れの定義も曇りの定義も、実に幅広い。

しかしよく考えて欲しい。ニュースやYouTubeでは常に天気予報が流れ続けている。そういう日常の何気なさに気づく人は、自ずと伸びてくる。

私が常々話しているように、あなたたちは何も特別な勉強や能力を得るために臨んでいるのではなく、当たり前のことを当たり前にするだけなのだ。

まとめ

TAFとは何か

TAFは、未来の天候を正確に言い当てるための道具ではない。変化する可能性のある時間帯を事前に把握し、判断の余裕を持つための道具である。

FM・BECMG・TEMPO・PROBという4つの変化群は、それぞれ意味が異なる。この違いを理解しているかどうかが、フライトプランの精度と、悪天候に対する心の準備を大きく左右する。

TAFだけで判断を完結させず、METAR・ATISと組み合わせて総合的に読み解く習慣を持ってほしい。雲の種類についての記事航空気象とは何かの記事もあわせて読むことで、TAFの一文一文がより立体的に理解できるはずだ。

よくある質問

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谷口 一貴 / Kazuki Taniguchi

Author

谷口 一貴 / Kazuki Taniguchi

株式会社SMART FLIGHT 代表取締役

元海上自衛隊潜水艦乗り。退官後、アメリカのフライトスクールでパイロットライセンスを取得。カナダ・アメリカを含む世界100校以上のフライトスクールを直接視察し、30回以上のカナダ渡航で航空会社・フライトスクール・空港関係者との信頼ネットワークを構築。訓練生がつまずく要因が英語であり、その後のキャリア・安全性にも英語が直結していることを現場の声から実感。この思想はほぼ全ての航空企業・フライトスクールから強い共感を得ており、パイロットを目指す前に英語によるマインド構築が何より大切であると確信している。

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Last Updated: 2026.08.24

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